ここで、ちょっと本文の流れをから離れて、主人公の由利に目を向けてみます。
実は由利という名前が出てくるのはもう少しあとなのですが、ここらへんまでの記述で、都内の大学の英文科に通う女子大生、そしてモデルクラブに登録しているということがわかります。
このあとどんどんキャラクターがはっきりしていき、青山通りに面した大学に通っている3年生、ボーイフレンドがいて、住まいは神宮前四丁目などが分ってきます。
そしてなんと言っも「クリスタル族」の言葉が生まれたように、裕福な家庭の帰国子女で、食べもの着るもの遊ぶところすべてにブランド的なこだわりがあって、都心の今おしゃれとされているスポットを活動範囲としている像が描かれていきます。
ところで由利の正確な歳っていくつでしょうか。
1980年に大学3年生ということで逆算できるわけですが、実は本文に
昭和三十四年に生まれた
とはっきり書かれています。
そして、この昭和三十四年生まれの世代的な特徴というのは、由利自身によって次のように語られています。
結局、私は “なんとなくの気分”で生きているらしい。
そんな退廃的で、主体性のない生き方なんて、けしからん、と言われてしまいそうだけど、昭和三十四年に生まれた、この私は、”気分”が行動のメジャーになってしまっている。
実はこのサイト作成者も同い歳なのですが、上の世代との関係で、この時代にこう言わざるを得なかった「気分」というのはよく分かります。
昭和34年、すなわち1959年生まれの由利は、2010年の今、51歳。
今、どんな女性なんでしょうね。
当時は 『JJ』の読者だったと用意に想像つくわけですが、今では『Story』あたりの読者でしょうかね。だいたいその雑誌に登場する女性のプロフィールかなと思います。
そして、もしこのまま生活を謳歌していれば、子育ても一段落して、「魔女」なんて言われるおしゃれをして、また昔のスポットに出没しているのかもしれません。
やや晩婚で娘がいるとすれば、その娘がやはり大学3年生というのもありえます。
娘もやはり、クリスタルな生活を謳歌しているのでしょうか、それとも、就活でひいひい言っているのでしょうか、あのあと30年間に起った日本経済の荒波を思うと、少し考え込んでしまいます。